免疫力判定検査
免疫力とは
免疫力とは、細菌やカビ、ウイルスなどの感染やがんなどから体を守る機能のことです。働きが異なる複数の細胞が協力し、総合的な能力で体を守っています。
免疫力が低下すると、自覚的に疲れやすくなり、さまざまな病気にかかりやすくなり、さらに、持病も悪化してしまいます。
免疫力が下がる要因
免疫力は加齢やストレス、生活習慣の乱れにより低下します。病気や病気の治療も免疫力が下がる要因です。
そして、免疫力は加齢変化します。思春期がピークとなり、20歳過ぎる頃から下がり始め、40代で50%、70代で10%まで下がるケースもあります。免疫力の低下具合は個人差があるため、1人ひとり測定し、免疫力がどのレベルか調べる必要があります。
免疫力はストレスや病気から体を守りますが、これらに負けて低下すると、悪循環となりさらに低下してしまうため要注意です。
免疫力低下とガン
免疫力は40歳を超えるとかなり低下が進行しています。ガンは日本人の死因第1位で、生涯でガンにかかる確率は男性が62%、女性が47%と推計されています。
参考:(c) 国立研究開発法人国立がん研究センター最新がん統計
一般的に、ガン発症率は年齢と共に増加し、大腸がんや肺がん、胃がんなどを発症することが多いです。女性は乳がんや子宮がん、卵巣がんなどにかかりやすいです。がんの発症率は免疫力と反比例して高まるため、がんの治療や予防に免疫力が必要だということがわかります。
自分の免疫力は検査で調べられるため、年齢以上に下がっていないかチェックしておきましょう。実年齢より10歳以上若い免疫年齢を維持することが推奨されています。
免疫力測定評価基準
免疫力測定評価基準とは、血液を採取し、3〜10項目のリンパ球の種類や比率、機能などを調べるものです。各項目の測定値をデータベースに基づいて3段階評価し、その合計から免疫力スコア(SIV)として評価します。この免疫力スコア(SIV)を5段階に分け、免疫グレードとして分かりやすく表現します。
さらに、検査結果からはCD8+CD28+T細胞数からはTリンパ球年齢、T細胞増殖係数から免疫力年齢が算定可能です。

免疫力を知ることで、適切な食事や糖質コントロールによる生活習慣の改善や、サプリメントや点滴により、レベルの維持や免疫力の向上に努められます。
検査で分かること
免疫力判定検査では、以下4つのことが分かります。
免疫力スコア判定
各項目の測定値をデータベースに基づき、高い(3点)、中位(2点)、低い(1点)の3段階で表し、その合計から免疫力スコア(SIV)を評価します。
免疫力グレード判定
上記で評価した免疫力スコア(SIV)を危険~充分高いまでの5段階に評価し、免疫グレードを算定します。
Tリンパ球年齢
CD8+CD28(T細胞の活性化に不可欠な補助刺激受容体)+T細胞数は年齢と共に減少します。その相関式を用い、Tリンパ球年齢を算定します。Tリンパ球年齢は免疫力年齢を推定する際の簡単な目安となります。
免疫力年齢
年齢と共に減少するT細胞増殖係数の相関式を用い、免疫力年齢を算定します。免疫力年齢は総合的な免疫機能の目安となります。
検査する項目とその役割
免疫力判定検査で検査する項目について詳しく解説します。
T細胞(CD3+細胞)(Tリンパ球)
T細胞は、感染の際、体の防御反応の役割を持っている主要なリンパ球です。細菌やウイルスなどの病原体が現れると、分裂増殖し、またサイトカインというタンパクを産生し、生体防御に直接関わっています。そして、免疫学的な防禦反応の調節も行います。
血液1mlの中には、白血球が4〜8百万個ありますが、この中の20~40%がリンパ球です。T細胞は、そのリンパ球の中の80%前後を占めています。
T細胞亜集団
T細胞亜集団※とは、T細胞の機能や性質によって分類された集団のことです。切り口により異なる細胞が見られ、1つはCD4とCD8という2種類の膜表面タンパクで見たもので、T細胞はどちらかを発現させます。別の切り口では、病原体などの抗原に接したことの有無を指標とし、ナイーブT細胞とメモリーT細胞の3つのT細胞亜集団に分けられます。T細胞亜集団は、細胞性免疫を活性化させる働きがあり、免疫システムのバランスを保ち、病原体への適切な防禦を確立させるのに重要です。
※亜集団:ある集団の一部として含まれている集団のこと。
CD4+T細胞(ヘルパーT細胞)
CD4+T細胞は、免疫反応を補助する働きがあり、ヘルパーT細胞といわれています。T細胞は無数の抗原に対応しており、無数のクローンから構成されているのが特徴です。これにより、免疫反応を補助する役割にも対応する抗原物質に、特異的に作用します。
CD8+T細胞(キラーT細胞)
ウイルスなどに感染した細胞および腫瘍細胞を殺傷する働きがあり、キラーT細胞ともいわれます。CD4+T細胞と同様、細胞殺傷能力は抗原特異的に作用するのが特徴です。
CD4/CD8細胞比
免疫機能はCD4+T細胞とCD8+T細胞が適切なバランスが取れている状態の時に、最も効率良く働きます。この比を免疫欲の働きを示す1つの指標として、適切なバランスが取れているのかを評価します。この細胞比は加齢とともに増加する傾向があります。
ナイーブT細胞
ナイーブT細胞は、病原体などの抗原物質に出会ったことのないT細胞です。細胞は休止状態にあり、新しい病原体に感染した際、これに対応するT細胞が増殖し、機能的に分化して、新しい病原体に対抗します。CD4+T細胞とCD8+T細胞の両方に亜集団があり、この亜集団の数が多い程、新しい病原体への対応が効率良く行われます。ナイーブT細胞は、加齢とともに減少していきます。
メモリーT細胞
メモリーT細胞は、病原体などの抗原物質に出会い、分裂増殖した後に残ったものです。再度同じ抗原物質に出会うと、すぐに反応して分裂増殖し、生体防御の役割を果たします。メモリーT細胞は他のT細胞と異なり、加齢とともに増加します。
ナイーブ/メモリーT細胞比
免疫機能は、ナイーブT細胞とメモリーT細胞が適切なバランスの時に最も効率良く作用します。この比を免疫力の働きの1つの指標として評価します。この比率はストレスや病気の時に減少する傾向があり、加齢とともに減少します。
T細胞増殖能
T細胞増殖能は、細菌やウイルスなどの病原体に出会うと分裂増殖し、病原体に特異的に対応できる細胞を増やし、大勢で対抗する機能のことです。この分裂増殖能が高いほど、感染に対抗する能力が高いです。
T細胞増殖係数
T細胞増殖係数とは、T細胞とT細胞増殖能の測定値から算出される係数です。個体レベルのT細胞の増殖能力を表します。係数が高いほど、感染に対抗する能力が高いです。個体年齢との逆相関性が高いため、免疫力年齢を推定できます。
免疫力年齢
T細胞増殖係数は年齢との逆相関線が高く、年齢と共に減少するのが特徴です。この相関式を用い、T細胞増殖係数から免疫力年齢を推定できます。これは、人の総合的な免疫機能の目安となります。
CD8+CD28+T細胞数
CD28はT細胞の大部分に発現されている分子で、T細胞を活性kするシグナル受容体です。年齢とともに減少します。ウイルス感染細胞やがん細胞を殺傷するキラー細胞は、CD8+CD28+T細胞から分化します。
Tリンパ球年齢
年齢と共に減少するCD8+CD28+T細胞の相関式を用いて、免疫力年齢を推定できます。これをTリンパ球年齢といいます。Tリンパ球年齢は、免疫力年齢、およびT細胞増殖能と高い相関性を示し、T細胞増殖能を推定する目安となります。
Treg細胞
T細胞の主要部分を占め、免疫反応を制御する働きがあるため、RegulatoryT細胞と呼ばれ、Treg細胞と言われています。Treg数が多いほど、がん細胞殺傷能力を抑えます。逆に、Treg数が減少すると、自己免疫現象が促進します。増えても減っても問題を起こすため、適切な数に整える必要がある細胞集団です。
B細胞
B細胞は、リンパ球の中でT細胞とならんで免疫系を構成する主要細胞です。対応する抗原物質と接すると、刺激されて分裂増殖し、機能的に分化し、細菌やウイルスなどの病原体を殺傷するタンパク抗体を産生します。
NK細胞
NKとはナチュラル(自然の)キラー(殺傷)の略です。ウイルス感染細胞や腫瘍細胞に出会うと殺傷する働きを広範囲に示します。NK細胞の受容体に認識されることで、初めてのウイルス感染細胞や腫瘍細胞にも作用します。